福岡県福岡市・直方市・朝倉郡東峰村
高取焼の歴史
高取焼は、1600年（慶長5年）、黒田長政が朝鮮陶工の八山（はっさん／日本名：高取八蔵）を連れ帰ったことに始まります。当初は軍事上の拠点に近い直方市の「鷹取山」の麓で焼かれ、その場所が名前の由来となりました。
高取焼の運命を決定づけたのは、江戸時代初期の茶人・小堀遠州（こぼり えんしゅう）との出会いです。遠州の指導により、高取焼はそれまでの力強い朝鮮風の作風から、繊細で優美な「綺麗寂（きれいさび）」の世界へと大きく舵を切りました。
藩の御用窯として、将軍家や公家への献上品を焼き続けた高取焼は、技術を外部に漏らさないよう厳格に管理され、その気品あふれる伝統は現代の窯元たちに「秘伝」として受け継がれています。
高取焼の作風
「土なのに、まるで絹や金属のような質感」と称される、極めて繊細な仕上がりが特徴です。
- 薄造りと軽さ: 「羽のように軽い」と言われるほど、器の壁面が薄く削り込まれています。これは茶道における動作を美しく見せるための工夫でもあります。
- 七色釉（なないろゆう）: 藁灰、長石、木灰などを絶妙に調合した「高取七色」と呼ばれる釉薬。これらを掛け合わせることで、黒、飴、黄色、白などが複雑に混ざり合った、奥深い景色が生まれます。
- 綺麗寂（きれいさび）: 侘び寂びの静けさの中に、洗練された都会的な「美しさ」や「気品」を同居させた、小堀遠州好みの美学がすべての器に流れています。
高取焼の主な作家
- 高取焼宗家（直方市）: 開窯の地・直方で、高取八蔵の血統を継ぐ直系。
- 亀井味楽（福岡市早良区）: 福岡市内に工房を構え、遠州好みの茶陶の伝統を今に伝える名門。
- 元永陶苑（東峰村）: 小石原地区にある窯元。伝統技法を活かしつつ、日常に寄り添う器も展開。
高取焼を見に行く
福岡市内のアクセスしやすい場所から、山あいの里まで、訪れる場所によって異なる趣があります。
- 福岡市美術館 / 福岡市博物館: 歴代藩主が愛した国宝級の高取焼が収蔵されており、その最高峰を鑑賞できます。
- 直方市 石炭記念館周辺: 高取焼発祥の地としての史跡があり、歴史の息吹を感じることができます。
- 東峰村（小石原）: 小石原焼の産地と同じエリアに高取焼の窯元もあり、両者の作風の違いを比較しながら散策できます。