萬古焼

三重県四日市市

萬古焼の歴史

萬古焼の歴史は、江戸時代中期の元文年間(1730年代)、桑名の豪商・沼波弄山(ぬなみ ろうざん)が茶の湯の趣味が高じて窯を開いたことに始まります。弄山は自分の作品が「いつまでも変わらずに伝わるように」という願いを込め、「萬古」あるいは「萬古不易(ばんこふえき)」の印を押しました。これが名前の由来です。

明治時代以降、四日市港の開港とともに輸出産業として大きく発展しました。さらに昭和時代には、熱に強い鉱石「ペタライト」を粘土に混ぜる画期的な技術を開発。これにより「火にかけても割れない」土鍋が誕生し、全国の食卓へ普及することとなりました。

現在は、伝統的な急須を作る「職人の技」と、現代のライフスタイルに合わせた調理器具を開発する「メーカーの知恵」が融合した、非常に活力のある産地として知られています。

萬古焼の作風

萬古焼の魅力は、高度な機能性と、土の性質を最大限に活かした独自の表情にあります。

  • 紫泥急須(しでいきゅうす): 常滑焼の朱泥と並び称される、萬古焼の代名詞。鉄分の多い粘土を「還元焼成」することで、独特の暗紫色に仕上がります。使い込むほどに光沢が増し、お茶の味をまろやかにするとされています。
  • 土鍋(ペタライト配合): リチウム鉱石であるペタライトを配合することで、熱膨張を抑え、空焚きにも耐えうる驚異的な耐熱性を実現しています。
  • 型万古(かたばんこ): 木型の上に薄く伸ばした粘土を貼り付けて成形する、萬古焼独自の古い技法。ろくろでは作れない複雑で繊細な形状が特徴です。

萬古焼の主な作家

萬古焼は「作家」と「高機能な窯元(メーカー)」の両輪が強いのが特徴です。

  • 清水潤: 伝統的な紫泥急須の技法を継承しつつ、現代的な造形美を追求する作家
  • 銀峯陶器 (GINPO): 土鍋の定番「花三島」で知られる、日本を代表する土鍋メーカー
  • 萬古陶磁器工業協同組合: 産地全体での品質管理や、新たな調理器具のブランド化に取り組んでいます

萬古焼を見に行く

四日市市は工業都市の側面と、古い窯場の風情が共存しています。

  • ばんこの里会館: 萬古焼の歴史展示、陶芸体験、そして膨大な数の土鍋や急須を販売するショップが併設されています。
  • 四日市市 萬古の里: 多くの窯元が集まっており、毎年5月の「四日市萬古まつり」は、全国から土鍋を求める人々で溢れかえります。
  • 菰野町周辺: 御在所岳の麓に広がるエリア。若手作家の工房やおしゃれなギャラリーが増えており、散策が楽しめます。

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