大分県臼杵市
臼杵焼の歴史
臼杵焼の歴史は、江戸時代後期の文化・文政年間(1800年代前半)に始まります。臼杵藩の御用窯として、現在の臼杵市末広地区に窯が築かれましたが、わずか十数年で廃窯となってしまいました。そのため、残された現物は「幻の焼き物」として語り継がれてきました。
しかし、約200年の時を経た2015年、地元の陶芸家や若手職人たちの手によって、臼杵焼は現代に蘇りました。古文書や当時の破片を研究し、当時のデザインを現代の感性でリデザイン。単なる再現にとどまらず、地域の資源(カボスや有機農業)と結びついた新しい「臼杵ブランド」として、いま全国的な注目を集めています。
臼杵焼の作風
「白磁」をベースにした、凛としていながらも柔らかいデザインが特徴です。
- 型打ち技法(かたうちぎほう): 石膏や木の型に粘土を押し当てて成形する技法。これにより、手びねりやろくろでは難しい、複雑で繊細な立体感を生み出します。
- 輪花(りんか)デザイン: 臼杵市の象徴である「蓮の花」や、菊花、稜花(りょうか)をモチーフにした形が有名です。花びらが重なり合うような陰影が、白一色の器に豊かな表情を与えます。
- マットな質感: かつての臼杵焼は光沢のある白磁でしたが、再興された臼杵焼は、落ち着いたマットな質感の「生成り色の白」が主流です。料理を主役に引き立てる、現代的な美学が貫かれています。
- カボス文様: 大分県の名産であるカボスの断面をモチーフにしたデザインなど、地域性をユーモアたっぷりに取り入れた作品も人気です。
臼杵焼の主な作家・窯元
- 臼杵焼研究所: 伝統を現代に繋ぐ中心拠点。若手陶工たちの育成や、地域ブランドとしての展開を一手に担っています。
臼杵焼を見に行く
国宝・臼杵石仏や古い町並みが残る臼杵市は、器探しの旅に最適です。
- 臼杵焼研究所 / ギャラリー(さらら内): 実際に作られている現場の空気を感じながら、最新のラインナップを手に取ることができます。
- 臼杵市街地のセレクトショップ: 城下町の情緒ある建物の中で、臼杵焼を扱うお店が点在しています。
- うすきあるき: 石畳の美しい町並みを散策しながら、臼杵焼で料理を提供するカフェを巡るのがおすすめです。