福島県大沼郡会津美里町(旧本郷町)
会津本郷焼の歴史
会津本郷焼の歴史は、戦国時代末期の1593年、会津藩主・蒲生氏郷が若松城(鶴ヶ城)の屋根瓦を焼かせるために、播磨国(現在の兵庫県)から瓦工を招いたことに始まります。
その後、江戸時代初期に瀬戸(愛知県)から陶磁器の技術が伝わり、東北地方で最も古い「陶磁器産地」として確立されました。さらに江戸時代中期には、藩の政策として磁器の原料となる石粉(石粉)の発見に成功し、陶器に加えて磁器の生産も盛んになりました。
明治時代には、パリ万博に出品されるなど海外でも高く評価されましたが、2011年の東日本大震災では多くの窯が倒壊するなど大きな被害を受けました。しかし、陶工たちの不屈の精神で復興を遂げ、現在は10以上の窯元が、伝統の技と現代の感性を融合させた作品作りを続けています。
会津本郷焼の作風
最大の特徴は、一つの産地の中で「陶器(温かみのある土もの)」と「磁器(透き通るような白磁)」の両方が作られていることです。
- 陶磁共生: 陶器は飴釉(あめゆう)や緑釉(りょくゆう)を使った素朴で力強いものが多く、磁器は白磁に呉須(ごす)で描く鮮やかな染付が特徴です。
- ニシンの鉢: 会津本郷焼を象徴する器。四角い形状で、会津の郷土料理「ニシンの山椒漬け」を作るために考案されました。厚手で丈夫な造りは、厳しい北国の生活の知恵が詰まっています。
- 多様な技法: 伝統的な飴釉から、現代的なパステルカラーの作品、さらには繊細な透かし彫りまで、窯元ごとに非常に個性が豊かなのも魅力です。
会津本郷焼の主な窯元
- 宗像窯: 会津本郷焼の伝統を象徴する名門。美しい飴釉の作品や、現役で稼働する巨大な登り窯が有名です
- 樹ノ音工房: モダンで可愛らしいデザインが、若い世代やカフェなどから絶大な支持を得ています
- 草春窯: 繊細な「透かし彫り」の技術を磁器に施した、芸術性の高い作品を生み出しています
会津本郷焼を見に行く
会津美里町の「本郷地区」は、コンパクトなエリアに窯元が点在しており、歩いて巡ることができます。
- せと市(早朝販売): 毎年8月の第1日曜日に開催される伝統の市。早朝4時から始まり、多くの人々が掘り出し物を求めて賑わいます。
- 会津本郷焼展示販売所: 各窯元の作品が一堂に集まっており、まずはここで全体の雰囲気をつかむのがおすすめです。
- 登り窯巡り: 町内には歴史を感じさせる古い登り窯の煙突が残っており、城下町・会津の奥座敷としての風情を楽しめます。