福岡県朝倉郡東峰村(旧小石原村)
小石原焼の歴史
小石原焼の歴史は、江戸時代初期の1669年、福岡藩主・黒田光之が肥前(有田・伊万里)から陶工を招いて窯を築かせたことに始まります。その後、磁器ではなく陶器が主流となり、さらに18世紀にはこの地の陶工が日田(大分県)へ渡って「小鹿田焼」を開窯させました。
昭和時代、民藝運動の提唱者である柳宗悦や、イギリスの陶芸家バーナード・リーチらがこの地を訪れ、その素朴で力強いデザインを**「用の美の極致」**として激賛。1958年のブリュッセル万国博覧会でグランプリを受賞したことで、「KOISHIWARA」の名は世界的に知られるようになりました。
現在は約50軒もの窯元が東峰村に点在しており、伝統的な技法を守りつつも、個々の作家が色彩や形に独自の感性を加えた「現代の小石原焼」を追求しています。
小石原焼の作風
最大の特徴は、ろくろを回しながら生み出される幾何学的で規則正しい文様です。
- 飛び鉋(とびかんな): ろくろを回しながら、金属のヘラを弾かせて連続した削り跡をつける技法。小石原焼を象徴する模様です。
- 刷毛目(はけめ): 化粧土を塗った直後に、刷毛を当てて回転させ、独特の縞模様を作る技法。
- 指描き・櫛描き: 指や櫛を使って、波状や格子状の模様を描き出します。
- 打ち掛け・流し掛け: 釉薬をひしゃくで勢いよくかけ、自然な流れの景色を作ります。
小鹿田焼が伝統的な「飴色や緑」の色彩を頑なに守るのに対し、小石原焼は作家によって白、黒、青、テラコッタ色など、驚くほど多彩なカラーバリエーションがあるのも特徴です。
小石原焼の主な窯元
- 太田哲三窯: 柳宗悦やバーナード・リーチの精神を色濃く受け継ぐ、小石原を代表する名門。
- 翁明窯元 : ドット柄や現代的な色使いが女性に絶大な人気。
- 梶原窯: 伝統的な技法をベースに、洗練されたモダンなデザインを展開。
- マルワ窯: 伝統を守りつつ、今の食卓に馴染む新しい形を追求。
小石原焼を見に行く
標高500mほどの高原に位置する小石原は、一年中澄んだ空気が流れる美しい村です。
- 小石原焼伝統産業会館: 歴史から製法、全窯元の作品展示まで、まずはここを訪れるのが正解です。
- 窯元巡り: 国道211号線沿いや、山あいの集落に窯元が点在しています。直売所を設けているところが多く、作り手と直接話ができるのも魅力です。
- 小石原民陶むら祭: 春(5月)と秋(10月)に開催。村全体が賑わい、多くのファンが新作や「お買い得品」を求めて訪れます。