石川県金沢市・小松市・能美市・加賀市周辺
九谷焼の歴史
九谷焼の歴史は、17世紀半ば(江戸時代初期)、大聖寺藩の命により九谷村で磁器が焼かれた「古九谷(こくたに)」に始まります。しかし、わずか50年ほどで突如として廃窯となり、その理由は今も謎に包まれています。
その後、約100年の沈黙を破り、江戸時代後期に金沢や加賀の地で再び窯が立ち上がりました。これを「再興九谷(さいこうくたに)」と呼びます。春日山窯、若杉窯、そして圧倒的な色彩を誇る吉田屋窯など、いくつもの様式が生まれ、九谷焼の多様な美が確立されました。
明治時代には、その鮮やかな色彩が「ジャパン・クタニ」として欧米で絶賛され、輸出産業としても飛躍を遂げました。現在では、伝統を受け継ぐ重鎮から、現代のライフスタイルに合わせたポップなデザインを手掛ける若手まで、層の厚いクリエイターが集まる産地となっています。
九谷焼の作風
九谷焼の真髄は、白い磁器の肌をキャンバスに見立てた、多色使いの「上絵付け(うわえつけ)」にあります。
- 九谷五彩(くたにごさい): 赤、黄、緑、紫、紺青(こんじょう)の5色を基本とします。透明感のあるガラス質の絵具を盛り上げるように塗るのが特徴です。
- 青手(あおで): 画面全体を、黄色や緑色などの絵具で塗りつぶす大胆な様式。古九谷や吉田屋窯に見られる九谷焼の象徴的なスタイルです。
- 赤絵・金襴手(あかえ・きんらんで): 細い赤の線で人物や風景を描き込み、さらに金をあしらった豪華絢爛な様式。
- 様式の多様性: 「飯田屋」「庄三」「永楽」など、時代ごとに確立された独自の画風がいくつも存在し、それぞれが独立した美しさを持っています。
九谷焼の主な作家
- 徳田八十吉
- 吉田美統
- 浅蔵五十吉
- 福島武山
- 仲田錦玉
- 中田一於
- 三ツ井為吉
九谷焼を見に行く
石川県内には、九谷焼の歴史と美に触れられる施設が点在しています。
- 石川県九谷焼美術館(加賀市): 九谷焼専門の美術館。様式ごとに分けられた展示室で、その変遷を深く学べます。
- 能美市九谷焼美術館: 「五彩館」「浅蔵五十吉記念館」などがあり、現代九谷の最高峰を鑑賞できます。
- 金沢・クタニキオスク / ギャラリー: 金沢市内にはセレクトショップが多く、伝統的なものから現代的な豆皿まで、手軽に手に取ることができます。