愛知県常滑市周辺
常滑焼の歴史
常滑焼の歴史は平安時代末期にまで遡り、日本六古窯の中で最も古く、かつ最大の生産量を誇ってきました。中世の常滑は、北は東北から南は九州まで、日本全国にその製品（壺・甕・摺鉢）が流通しており、まさに日本の窯業の「原点」とも呼べる場所です。
江戸時代に入ると、常滑の代名詞となる「急須」の制作が始まります。地元の鉄分豊富な粘土を活かした朱泥（しゅでい）の急須は、お茶の味をまろやかにするとして、煎茶文化の隆盛とともに全国にその名を知らしめました。
明治から昭和にかけては、建築用陶器の分野で日本をリードしました。都市化を支えた土管や、名建築・帝国ホテルに使用された煉瓦、そして現代の住まいに欠かせないタイルの生産など、時代のニーズに合わせて姿を変えてきた「産業の産地」としての側面も、常滑焼の大きな誇りです。
常滑焼の作風
常滑焼の最大の特徴は、その多様性と、鉄分を豊富に含んだ独自の土にあります。
- 朱泥（しゅでい）: 常滑を象徴する赤い色合い。鉄分を多く含む粘土を酸化焼成（酸素を十分に供給して焼く）することで生まれます。特に急須は、内側に釉薬をかけないため、土の鉄分がお茶のタンニンと反応し、渋みを和らげる効果があります。
- 焼き締め: 中世以来の伝統である、釉薬をかけずに高温で焼き締める技法。巨大な甕や壺に見られる力強い質感が特徴です。
- 藻掛け（もがけ）: 海を抱く常滑ならではの技法。乾燥させたアマモ（海藻）を器に巻き付けて焼くことで、海塩と反応した独特の模様が表面に現れます。
- 建築陶器: 伝統的な器だけでなく、タイルや衛生陶器（INAXのルーツ）など、生活インフラとしての陶器も常滑焼の重要な一部です。
常滑焼の主な作家
- 山田常山
- 村越風月
- 杉江寿門
- 沢田昭邨
常滑焼を見に行く
常滑市は、海を望む丘陵地に迷路のような「やきもの散歩道」が広がる、非常にフォトジェニックな街です。
- やきもの散歩道: レンガ造りの煙突、廃材となった土管が敷き詰められた道、巨大な「常滑招き猫」など、歩くだけで常滑の歴史と活気を感じられます。
- INAXライブミュージアム: 世界のタイルの歴史や、常滑の建築陶器の歩みを学べる、体験型ミュージアムです。
- とこなめ招き猫通り: 常滑は招き猫の生産量日本一でもあり、数多くの個性豊かな猫たちが旅人を迎えてくれます。
- セラモール: 広大な敷地に多くの卸問屋が並び、急須から普段使いの食器まで、圧倒的な品揃えの中からお気に入りを探せます。