佐賀県西松浦郡有田町周辺
有田焼（伊万里焼）の歴史
有田焼は、17世紀初頭（江戸時代初期）、朝鮮陶工・金ヶ江三兵衛（かながえ さんべえ／通称：李参平）らが有田の泉山（いずみやま）で磁器の原料となる「磁石（じしゃく）」を発見したことから始まりました。これが、日本における磁器誕生の瞬間です。
当時、中国の磁器が戦乱の影響で輸出不能となった隙を縫うように、有田の磁器はオランダ東インド会社（VOC）を通じてヨーロッパへ大量に輸出されました。有田で焼かれた器が伊万里の港から積み出されたため、海外や江戸の消費地では「伊万里（IMARI）」の名で親しまれ、現在でも当時の輸出向け作品は「オールド・イマリ」として世界のコレクターに珍重されています。
有田焼（伊万里焼）の作風
有田焼の最大の特徴は、透き通るような「白磁の美しさ」と、そこに施される「鮮やかな絵付け」です。陶器とは異なり、高温で焼き締まるため、薄くて軽く、指ではじくと「チン」と高い金属音がするのが特徴です。
主な様式には、以下のようなものがあります。
- 初期伊万里: 磁器誕生直後の素朴な風合い。青一色で描かれる「染付（そめつけ）」が主流。
- 柿右衛門様式（かきえもん）: 酒井田柿右衛門が完成させた、余白を活かした絵画的な構成。乳白色の「濁手（にごしで）」と呼ばれる素地が特徴。
- 金襴手（きんらんで）: 赤や金の絵具を贅沢に使った、豪華絢爛な様式。17世紀後半の輸出用作品に多い。
有田焼（伊万里焼）の主な作家
- 酒井田柿右衛門
- 井上萬二
有田焼（伊万里焼）を見に行く
有田町は「世界の有田」として、町全体が磁器の歴史博物館のような佇まいです。
- 佐賀県立九州陶磁文化館: 九州各地の陶磁器に加え、名高い「柴田コレクション」など有田焼の最高峰を鑑賞できます。
- 有田内山（うちやま）の街並み: 「トンバイ塀」と呼ばれる古い窯の耐火レンガを再利用した塀が続く通りは、産地ならではの風情があります。
- 有田陶器市: 毎年ゴールデンウィークに開催される日本最大級の陶器市。100万人以上が訪れ、町中が熱気に包まれます。