兵庫県豊岡市出石町
出石焼の歴史
出石焼の歴史は江戸時代中期に遡ります。伊勢の陶工、二代目・伊豆屋弥左衛門（いずや やざえもん）が出石の地で磁器の原料となる良質な「柿谷陶石（かきたにとうせき）」を発見したことが始まりです。
その後、有田（肥前）から陶工を招いて技術を導入し、藩の保護のもとで発展しました。明治時代には、そのあまりにも純白な美しさがセントルイス万国博覧会で金賞を受賞するなど、世界的な評価を確立します。
現在も「但馬の小京都」と呼ばれる出石の城下町を中心に、数軒の窯元がその伝統を守り続けています。他の磁器産地が「絵付け」を主役にするのに対し、出石焼はどこまでも「白」そのものの美しさを追求する、非常にストイックな産地です。
出石焼の作風
出石焼の最大の特徴は、「神秘的なまでの白さ」と、それを活かした「精緻な彫刻」にあります。
- 白磁（はくじ）: 鉄分が極めて少ない純白の陶石を使用するため、仕上がりは雪のように白く、透き通るような質感になります。
- 浮き彫り（彫り・浮かし）: 白一色の世界に表情を与えるのが、職人の手による繊細な彫刻技法です。花鳥風月を立体的に彫り出す技法は、色の助けを借りないからこそ、その技術の高さが際立ちます。
- 透かし彫り: 器の一部をくり抜き、幾何学的な模様などを作る技法。高度な成形技術が必要とされます。
出石焼の主な作家
- 永澤永信（永澤兄弟製陶所）
- 上田幸山
出石焼を見に行く
出石は辰鼓楼（しんころう）や城跡が残る美しい観光地であり、散策と焼き物巡りが同時に楽しめます。
- 出石陶芸館: 出石焼の歴史資料の展示や、各窯元の作品を網羅した展示販売を行っています。
- 城下町の窯元巡り: コンパクトな街並みの中に窯元やギャラリーが点在しており、名物の「出石そば」を堪能しながら器を探すのが定番のコースです。
- 出石焼体験: 多くの窯元で、白磁の絵付けや作陶体験が可能です。